下肢静脈瘤センター(血管外科)

足の御症状、そして下肢静脈瘤は、おひとりおひとりで千差万別です。
したがって、患者さまおひとりおひとりに合った最適な治療を提供するためには、正確な診断が必要です。
「むくみ」「血管が浮く」などの足の御症状は、患者さまご自身が「見てわかる」症状です。しかし、隠れたところにできる静脈瘤もあります。
御症状が下肢静脈瘤以外のご病気(静脈血栓症・リンパ浮腫・変形性関節症等の整形外科的疾患・動脈硬化性疾患等)により生じることもあります。これらは、専門医が「診ないとわからない」病気です。
ご存知ですか?下肢静脈瘤

下肢静脈瘤とは、足の皮膚のすぐ下の静脈(表在静脈といいます)がふくらんでコブになる蛇行する病気です。
心配な病気ではありません
命に関わる病気ではありません。
足を切断することもありません。
「見てわかる」病気です。でも「診ないとわからない」病気です。
御症状は、「皮膚の下に見えるコブ」や「むくみ」です。
したがって、患者さんご自身で「見てわかる」病気です。
しかし、足には「静脈瘤が隠れてできる場所」があります。
隠れた静脈瘤の診断には、専門医の経験、そして超音波検査が必要です。
また、足のむくみなどの御症状は、静脈血栓症・リンパ浮腫・膝の変形性関節症などによっても生じます。むくみの原因となる病気が下肢静脈瘤なのか、または他の病気があるのか、きちんと診断することが必要です。
下肢静脈瘤は、軽症・中等症・重症に分かれます。

また、進行度によって治療法が異なります。

①軽症静脈瘤
外から見える静脈瘤、それだけがあるタイプです。
静脈瘤全体の3〜8%を占めています。1)
クモ状型静脈瘤 | 皮膚内の毛細血管が拡張したタイプです。 | ![]() |
---|---|---|
網目状型静脈瘤 | 皮下浅いところの小静脈の静脈瘤です。 | ![]() |
分枝型静脈瘤 | 静脈瘤はありますが隠れた静脈瘤はありません。 | ![]() |
外観を含めて御症状のある軽症静脈瘤は、フォーム硬化療法(外来において施行する注射療法)によって治療できます。
通常、手術は不要です。
②中等症静脈瘤
外から見てわかる静脈瘤以外に、同じ程度の静脈瘤が他の場所(内もも、または、ふくらはぎ)に隠れているタイプの静脈瘤です。静脈瘤全体の83%を占めています。1)



“隠れた静脈瘤が静脈瘤全体のなかで最も多いこと”
このため、静脈瘤は「診ないとわからない病気」です。
経験のある専門の血管外科医の診断が必要です。
御症状のある中等症静脈瘤は、焼灼術が可能である場合には血管内焼灼術が推奨されています。2 )
③重症静脈瘤
静脈瘤が原因で、皮膚症状(色素沈着・皮膚脂肪織硬化・皮膚潰瘍)が生じた状態です。 皮膚潰瘍を伴う静脈瘤は静脈瘤全体の5〜6%を占めています。1)
静脈瘤により皮膚潰瘍をきたしている場合には、まずは潰瘍を外来治療で治します。
そのあとに、静脈瘤に対して根治治療(必要であれば手術)を行います。



1):静脈学2016;27(3):249-257「一次性下肢静脈瘤の治療 ─本邦における静脈疾患に関するSurvey XVII ─」より引用
2)https://www.nice.org.uk/guidance/cg168
ホームページの足の写真については、センター長が診療を担当させていただいた患者さまから許可をいただいて掲載しております。
ご存知ですか?下肢静脈瘤の検査

下肢静脈瘤の診断に必要な検査は「超音波検査」です。
痛くない検査です
無害です(被爆しません)
初診時に診察室で検査します
- 初診当日に
静脈瘤があるか、ないか?
静脈瘤がある場合には、軽症か、中等症か、重症かの診断がつきます。
- 超音波検査は、
妊婦さんがお腹の赤ちゃんをチェックする検査と同じです。
したがって、痛くない検査・無害の検査です。
- 必要に応じて、深部静脈もきちんと精査します。
深部静脈のチェックも超音波検査で可能です。


軽症静脈瘤

御症状のある軽症静脈瘤の方には、硬化療法をお勧めしています。
硬化療法は外来で簡単にできる注射の治療です。
軽症静脈瘤の患者さんには手術は不要です。
中等症静脈瘤

御症状のある中等静脈瘤の方には血管内焼灼術をお勧めしています。
局所麻酔(抜歯と同じ麻酔方法です)を使用し1時間ほどで終わる手術です。
また、日帰り手術も可能です。
重症静脈瘤

静脈うっ滞性潰瘍のある患者さまには、まず潰瘍を外来通院で治療いたします。
その後、潰瘍再発を防ぐために静脈瘤に対して手術をいたします。
(手術は血管内焼灼術または下肢静脈瘤抜去切除術を行います。)
硬化療法・手術等の治療に対して不安がある患者さまや、忙しくて治療のための時間を確保できない患者さまには、弾性ストッキング着用による圧迫療法をお勧めしています。
下肢静脈瘤は、命にかかわらない、心配のない病気です。
弾性ストッキングを着用して下肢静脈瘤が進行しないように注意していただき、定期的に外来で拝見いたします。
治療内容のご紹介
静脈瘤に対する硬化療法

静脈瘤に薬剤(硬化剤:静脈瘤のための注射薬です)を直接注入する治療法です。
とても細い注射針を使用するので、麻酔の必要はありません。
外来で施行する注射の治療なので、5〜10分ほどで終了します。
また、手術ではありませんので簡単です。
クモ状型・網目状型などの軽症静脈瘤、陰部静脈瘤が適応です。
下肢静脈瘤血管内焼灼術
中等症静脈瘤(見えているコブ+隠れたところにできる静脈瘤)に対する手術法のひとつであり、現在、下肢静脈瘤手術のなかで主流となっている方法です。
従来の手術(抜去術)では切除していた静脈瘤の血管内にカテーテル(レーザーまたはラジオ波)を入れ、内側からの熱により血管を閉塞させる手術です。
血管を取らないので、傷痕がほとんど残らず、患者さまにとって楽(術後の痛みが少ない、術後の青あざが少ない)な手術です。
麻酔は局所麻酔(抜歯と同じ麻酔です)を使用し、手術時間は1時間ほどで日帰り手術も可能です。




下肢静脈瘤グルー治療
中等症静脈瘤(見えているコブ+隠れたところにできる静脈瘤)に対する手術法のひとつです。隠れたコブ・本幹の静脈瘤にカテーテルを入れて治療する血管内治療です。「下肢静脈瘤血管内塞栓術(K617-6)」という名前がついています。
保険診療です。2019年に新たに保険適応になりました。
グルー(glue)とは接着剤を意味する英語です。医療用瞬間接着剤で本幹下肢静脈瘤を閉塞させるカテーテル治療です。 日帰り対応で、翌日仕事復帰可能です。血管内焼灼術と比較して、術後の血栓合併症が少ないと報告されています。 日帰り入院帰宅時より、術後の煩わしい弾性ストッキング着用は不要です。 静脈瘤の形、大きさ、患者さんのアレルギー体質によっては,従来の血管内焼灼術が適している場合もございます。


下肢静脈瘤抜去(ストリッピング)術
中等症静脈瘤(見えているコブ+隠れたところにできる静脈瘤)に対する手術法のひとつです。
不全となった静脈瘤(内もも、またはふくらはぎにある、隠れている静脈瘤)を切除する(抜き取る)手術です。
静脈瘤がひどい(蛇行が強い・静脈瘤が大きすぎるなど)、静脈瘤が皮膚に近い等、血管内焼灼術が不向きな患者さまが適応です。
静脈瘤を切除するので、最も根治的な方法です。
現在では、創を小さくする内翻法(周囲組織への傷害が少ない方法)など、様々な技術的工夫のうえで手術を行っております。
血管内焼灼術同様、麻酔は局所麻酔(抜歯と同じ麻酔です)を使用し、手術時間は1時間ほどです。日帰り手術も可能です。
弾性ストッキング着用による圧迫療法

医療用の弾性ストッキングを着用し、うっ血をとる・予防する方法です。
うっ血をとるうえでは、膝下ハイソックスタイプで十分です。
通常、中圧(20-30mmHg )のストッキングをお勧めしています。
足首とふくらはぎのサイズを測定し、ご自分の足に合ったものを着用するのがコツです。
靴下なので誰でも簡単に始められる治療法ですが、“治す”方法ではありません
(静脈瘤が消えることはありません)。
治療方法と費用
下肢静脈瘤の手術費用(自己負担金)
1割負担のかた | 3割負担のかた | |
---|---|---|
下肢静脈瘤硬化療法 | 約 1,700円 | 約 5,100円 |
下肢静脈瘤血管内焼灼術 | 約 14,400円 | 約 43,200円 |
大伏在静脈抜去術 | 約 11,000円 | 約 33,000円 |
下肢静脈瘤抜去切除術 | 約 10,200円 | 約 30,600円 |
※入院費用等は含まれておりません。詳細についてはお電話にてお問合せください。
ご存知ですか? 再発性静脈瘤

他院・高位結紮術後の再発性静脈瘤
下肢静脈瘤は、手術・治療ののち数年(4・5年〜10年以上)して再発することがあります。